[Web3]RSS3とMisskeyのパートナシップ契約
RSS3 と Misskey がパートナーシップ契約を結んだ[1]。そもそも RSS3 とは、Misskey とは何か、そこから解説していきたい。
分散型 SNS : Misskey
Misskey は ActivityPub というプロトコルを使用している分散型 SNS の一つである。Misskey は日本人が中心的に開発している SNS である。同じ ActivityPub プロトコルを使用しているプロジェクトで有名なものに Mastodon がある。これらの分散型 SNS の特徴は、誰もが自由にサーバーを構築することができる点である。それぞれのサーバーは ActivityPub を用いて相互的に通信することができるため、サーバーの垣根を超えてユーザーがやり取りをすることができる。プロジェクトとしては違うものではあるが、同じプロトコルを使用しているため投稿のやり取りをすることができる。つまり Misskey と Mastodon で投稿のやり取りをすることができる[2]。この ActivityPub を用いて形成される大きなネットワークを一般的(かつ狭義的)に Fediverse と呼ぶ。狭義的などと言っているが、Fediverse に具体的で確固たる定義がある訳ではなく、〇〇界隈みたいな雑な範囲を示していると思ってもらって良い。
色々と新しい言葉を並べた。これらは、もっと知りたい人のためのキーワードであり、なんとなく理解したい人は「分散型 SNS はサーバーがたくさんあってそれらが相互通信しているんだ」と理解しておけばよい。
分散型 SNS であることとは
分散型 SNS は、その名前の通り、中央集権型 SNS と対をなす存在である。Facebook や Twitter は中央集権型 SNS であり、投稿などのユーザーのデーターは彼らのもとに集約される。莫大な情報が運営者のもとに集約されたり、自分の権利がそれらの管理下に置かれることは利便性の高いサービスを受ける上で必要になるが、リスクである。サービスを使う上で運営者を信用する必要がある。運営者を信用する構造が必要であるため、運営者がデータを漏洩してしまうリスクをユーザーが負わなくてはいけない。ある日、急にアカウントが運営者によって凍結されてしまうこともある。分散型 SNS のサーバーを自分でたてたら、信用するのは自分自身であるし、凍結されることがない。自分のユーザーデータも自分で管理することができる。
ユーザーが自分の権利を最大化し、ユーザー主権とするようなものは Web3.0 と呼ばれる。Web 3.0 の一番の例はブロックチェーンである。ブロックチェーンによって、中央の管理者を必要とせずに送金することができる。
分散型 SNS の現状は、サーバーそれぞれが分散しているものの、1つのサーバーに着目すると中央集権的になっている。サーバーの管理者はそのサーバーに所属しているユーザーを凍結することができる。このサーバー単位の中央集権を分散化するのが RSS3 の目指すところである。アイデンティティが各プラットフォームに固定されていたところから開放するのである。
RSS とは
RSS3 が生まれるに至った背景には RSS というものがある。RSS は Web サイトの更新情報を配信するシステムである。通常、Web サイトが更新されているか気になったとき、人々はわざわざそのサイトを訪れて更新があるのか確認しにいかなくてはいけない。サイトを訪れても更新がされていない場合もある。フィードリーダーを用いれば、RSS を配信しているサイトであれば人々が更新を見に行かなくても、Web サイトの更新を知ることができる。
これらの仕組みは必要性が下がっており、近年ではあまり活用されていない。Twitter の公式アカウントが Web サイトの更新を通知してくれる。また、Twitter のようにアカウントを登録してもらうサービスで、様々な情報を RSS で公開してしまうと、サービス自体の収益性が下がってしまう。そのため、囲い込みのために RSS は配信されていない。Google Discover やスマートニュースのようにレコメンドシステムを組み込んだアグリゲーターが主流になってきた。RSS の活用はどんどん下がってきているように思う。しかし、現在の Web サイト、特にメディアでは RSS を配信しているので、RSS を使うことができる。Podcast も RSS を使用して配信されている。
RSS は便利ではあるが、Web1.0 時代のものであった。Web2.0 時代のプロジェクトによってその必要性は大きく下がってしまった。Web2.0、そしてこれからやってくる Web3.0 の時代に合わせて考えだされたのが RSS3 である。
RSS3 とは
RSS3 は Natural Selection Labs によって提唱、設計されているプロトコルである。「RSS3: A Decentralized Content and Social Protocol」という Light paper[3] が出されている。この中で、新時代の Web には分散型エコシステムが必要であるとしている。分散型エコシステムには、3つの原則であるオープンソース、民主的ガバナンス、分散型コントロールに加えて、包括性、中立性、インセンティブが必要としている。RSS3 はこれらの必要としているものを満たしているプロトコルになっている。
RSS3 ファイルはさまざまな場所に保存することができ、分散的な形態を取る。より分散化するために IPFS を使用することが勧められている。
オリジナルである RSS には公開情報しか存在しなかったが、RSS3 では RSS3 のユーザーがデータを公開するのか、特定のユーザーだけが読めるようにするか決定することができる。
RSS3 はオープンであり分散型ストレージの上に存在しているためユーザーは特定のアプリケーションやプラットフォームに縛られることはない。各プラットフォームに固定されていたアイデンティティを開放することになる。
Fediverse を代替例として挙げると、ある事件によって Fediverse のいくつかのクライアントが特定のサーバーのアクセスができないようにした[4]。クライアントの開発者たちに対して賛成と反対の色々な意見が起こった。しかし、Fediverse のサーバーには Twitter API のように API が制限されるといったことはなく、つまりクライアントの囲い込みといったことは発生しないため、サーバーのユーザーは自由にクライアントを乗り換えることができた。
Twitter や Instagram などの主要な SNS は GDPR により自分のユーザーデータをエクスポートすることができるようになった。しかし、各プラットフォームのデータをそのまま別のプラットフォームで扱うといったことはできない。RSS3 を用いた場合、データーの所有権とコントロールはユーザー自身にある。
RSS3 は RSS3 を用いる開発者に対してオープンであるために拡張性を広げてさまざまなモジュールを持てるように設計されている。拡張性を活用したミドルウェアの具体例として、ペイドアンロックが挙げられている。
Re:ID
Re:ID は RSS3 が実装された Chrome/Chromium プラグインである。twitter.com で投稿をすると、Re:ID がそれを検知して投稿した内容を RSS3 ファイルとして保存していく。Re:ID の実際に使ってみたレポートは aqz/tamaina 氏の「RSS3をRe: IDで使ってみる + RSS3プロジェクトについての個人的まとめ | aqz/tamaina[5]」に書いてある。Re:ID は現状、招待制なので、aqz/tamaina 氏や 私(@8blank71@twitter.com もしくは @blank71@fedibird.com)に連絡して招待してもらうか、RSS3 | Linktree の Telegram か Discord で招待してもらうと良いだろう。ちなみに、Telegram と Discord はブリッジしていて、全く同じ情報が流れてくるので、どちらかだけに入ればよい。
あとがき
Light paper を読むと RSS3 と HiÐΞ には親和性があるように思えてくる。RSS3 の日本語記事は Ameba Blog に投稿されていた。私が HiÐΞ で書くようにオススメしたのだが、この選択は良かったように感じる。
そういえば、note.com は記事のエクスポートができないじゃないか、と随分前から指摘されていたことを思い出し、検索してみた。今年の4月にエクスポートの機能を搭載する予定であると言っている。今は8月だが、エクスポートはできない。
B1無職だが、家から出ないで収入を得られるパートタイムが欲しい(甘え)。
[https://twitter.com/rss3_/status/1420021679997308940](https://twitter.com/rss3_/status/1420021679997308940) ↩︎
とは言っても、フォーマットを揃えないと違うプロジェクト同士の相互通信は難しい。例えば、絵文字リアクション。Discord がイメージしやすい例だろう。絵文字リアクションの機能は Misskey に搭載されているが、Mastodon には実装されていない。そのため、Misskey のユーザーが Mastodon から受け取った投稿に対して絵文字リアクションをしたとしても、相手に正しくリアクションの内容が伝わらない。なお Mastodon に絵文字リアクションの機能を追加しているサーバーもあり、その場合は相互的に絵文字リアクションの通信が行えるようになっている。 ↩︎
How the biggest decentralized social network is dealing with its Nazi problem - The Verge ↩︎