朝一番に目が覚めた麦子は、「ゆかた着たい!」と言いました。
今夜は近くの公園で夏祭りが開かれるのです。
「りんごあめ食べれるかな」
つやつやのりんご飴を想像して麦子は心躍らせました。
公園には一週間前から赤い提灯がたくさんぶら下がっております。
「お祭りは夜からだからね」
麦子のお母さんは朝食の支度をしながら微笑みました。
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麦子がお昼寝から目覚めたとき、もう日が沈みかけておりました。
お腹に掛かっていたたまご色のタオルケットを放り投げ、麦子はお母さんのもとへ駆け寄ります。
お母さんが畳の部屋の押し入れの奥から水色の浴衣を出してくれました。
水色の浴衣に身を包んだ麦子は、その場でくるくると回ってみせます。
麦子のお母さんは優しく手を叩いて「似合ってるわよ」と微笑みました。
夏休みの匂いがします。
住宅地を歩いてゆくと、子どもたちの声が次第に賑やかになっていきます。
同じ方向に歩いてゆく人がちらほらと増えていき、なにやら香ばしい匂いが漂ってきました。
「おまつりだ…!」
麦子は思わずつぶやきました。
夜の公園はまるで別世界のようです。
赤い提灯や夜店の蛍光灯が浮足立った人々を照らしております。
麦子はお母さんと手をつなぎ、夜店を見て回りました。
「人が多いから、手を離さないようにね。はぐれてしまうから」
お母さんが言いましたが、麦子の頭の中はりんご飴のことでいっぱいのようでした。
焼きとうもろこしやフランクフルト、ベビーカステラの夜店を通り過ぎ、麦子のお母さんはラムネをひとつ買ってくれました。
麦子は喉が渇いていたのでラムネをぐびぐびと飲みましたが、炭酸が喉でぱちぱちして苦しいのですぐお母さんに返してしまいました。
お母さんは微笑みながらラムネを受け取りました。
お母さんが歩くたびに、瓶のガラス玉がカランカランと鳴るのでした。
麦子はあたりを見渡しました。
綿あめやかき氷や金魚を手に持つ子どもたちが麦子の横を駆け抜けていきます。
けれども、真っなりんご飴を持つ子は一人としていませんでした。
「りんごあめないのかなぁ」
お母さんと手をつなぎながら麦子は肩を落としました。
続き→麦子の夏祭り(なか)
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