Web3ってなんだろう?
クリプトユニバーシティで行うオンライン勉強会の台本用にリサーチしたことをブログにまとめました。「Web3ってなに?」という方のために、ざっくりとした理解の助けになれば幸いです。
クリプトユニバーシティとは、クリプトやブロックチェーンを面白がりながら学ぶことを目的にしたコミュニティです。興味のある方はぜひ入学してみてください。
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なぜWeb3が必要なのか
あなたの持っている情報は本当にあなたのものでしょうか?
たとえば、AmazonのKindleで購入した本は、ユーザー登録した端末のアカウントでないと読むことはできません。つまりアカウントがBANされたらせっかく買った漫画は読めません。
あなたの書いたnoteは、企業が運営しているサーバに保管されており情報を保有している訳でもなければ、有料で販売したnoteの売上の数十%はプラットフォームにささげなければいけません。
また、世界に無数にあるWebサービスではそれぞれアカウント作成を求められ、クレジットカード情報などの重要事項を預けるために企業やサービスを信頼しないといけません。企業は多大なコストを払ってセキュリティを維持し、商品の価格に転嫁しています。
Web3はこうした課題を少しでも良い方向にもっていくことができないか?という発想のテクノロジーです。
歴史的な背景から、かんたんに振り返ってみましょう。
Web1(1990年〜2005年)
- WWW(ワールドワイドウェブ)のはじまり。分散型・無差別・ボトムアップ設計・普遍性
- 静的なHTMLページ、一方向の情報発信と受信に限定
- ダイアルアップの電話回線、Webページの閲覧、チャット機能
この頃のWebは学校(研究機関)・企業のみが利用するようなイメージで、限られた人間が分散的に利用するものでした。
Web2(2005年〜2020年)
- 大企業が運営する中央管理サービス化。GAFAといった企業によりもたらされた便利なWeb
- ユーザーのデータをビッグデータとして集積して分析、AIによる処理解析の高速化
- 常時同時接続な環境とソーシャルメディアやクラウドデータベースを活用したものが主流となる
Web1は一方通行的な通信であったのに対し、Web2では双方向でありユーザー参加型であることが特徴としてあります。ユーザーは無料で利用することができたり、コンテンツをプラットフォームに提供していく形が多いです。
Web3(2021年〜)
- Web3はWeb2の課題を受けて、パブリックブロックチェーンを利用した分散型ネットワークや非中央集権のWebのあり方をあらわす
- ある意味で当初のWeb1の概念に立ち返るような思想
- 支配的なWebからデータをユーザ側に返還しP2Pを実現する
暗号資産ウォレットの接続だけでアプリの利用がはじめられたり、プラットフォームを依存しない送金や情報のやり取りができます。背景には、DLT(分散型台帳技術)を用いたパブリックブロックチェーンの存在が大きく影響しています。
Web2の課題とは
現在多くの人が利用している中央集権的なプラットフォームの問題点とはなんでしょうか。
何十億人もの人々がアクセスでき、無料で世界中の人々とつながることができます。企業がバックグラウンドにあるということはバックアップ・サポートが行き届いていることにもつながります。しかし、その反面に目を向けることが必要です。
たとえば、以下のような課題があります。
- 中央集権プラットフォームによる恣意的なルール設定
- 本来的にユーザに帰属すべき情報の搾取
- プラットフォーマーによるイノベーションの阻害
中央集権プラットフォームによる恣意的なルール設定
iOSアプリで提供されているアプリはAppleのルールを守らないと、アプリストアから除外されたり、アプリ内の課金にはAppleに対する多額の手数料がかかります。
本来的にユーザに帰属すべき情報の搾取
表現活動はプラットフォームから検閲されており、一方的な価値観により削除されたりします。たとえば、2021年1月にトランプ元大統領のTwitterアカウントが永久凍結された際には、Twitter社による人権侵害であるという主張がありました。一方で、元大統領の発言を危険とみなした場合、Twitter社が利益追求のために元大統領のアカウントを永久停止しないのは当然の権利だという主張が対立し、議論が巻き起きました。(結果的にBANしてTwitterの株価暴落)
犯罪行為を肯定することはできませんが、国家の司法機能を担っているわけでもない企業が、ソフトウェアの進化により裁定機能を持ち始めていることは意識すべき問題だということです。
Facebookが収集していた個人情報の一部がUKケンブリッジ・アナリティカ社を通じて政治(選挙広告)に利用されていたというケンブリッジ・アナリティカ事件」は有名です。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO54306380Q0A110C2EA1000
プラットフォーマーによるイノベーションの阻害
プラットフォームの初期は、ユーザー、開発者、企業など協力してくれる存在(サードパーティ)を集める努力をします。Meta社はInstagramやmessengerを買収したりしながらネットワーク効果を最大化しながらユーザーを集め成長していきました。成長しきるとどうなるのか。以下の図のS次カーブの右上のように搾取・競合の状態になります。
出典:https://cdixon.org/2018/02/18/why-decentralization-matters
上記図はプラットフォーム企業が成長していくことを重視すると今度はユーザーからデータを搾取し、協力関係であったのが競合に変化していく課題を指摘しています。
クリプトのカルチャーとしてある分散型を指向する理由は、プラットフォームによる検閲や政府の中央集権による恣意的なに邪魔をされないというリバタリアン的な理由がいわれますが、本来的には分散化されていないと「イノベーションが阻害されるライフサイクルを辿ってしまう」ということが理由とされるそうです。
Web3で変化するもの
Web3では、こうしたWeb2の課題を技術的に乗り越えることができる可能性を秘めていると言われています。
Web3は「データの所有権とコントロールが分散化されていること」が特徴です。こうした文脈にBitcoinやEthereum、NFTが登場します。
- Bitcoin:管理者のいないインターネット上の財産
- Ethereum:ユーザーが所有・運営する分散型ワールドコンピュータ
- NFT:あらゆる対象の情報を所有証明できる力をユーザーに与える
ユーザーの情報はユーザーが管理し、プラットフォームに依存せずに直接情報や金銭的価値をやりとりすることができ、経済圏を作ることができます。
中央集権的なサーバー管理がされていないということは、情報を単一の組織が保有していないことを意味します。匿名で十分に分散された参加者たちが、自律分散的に情報を管理していく体制を構築することで、不正な利用やハッキングを防ぎます。これを実現するコストはパブリックブロックチェーンに任せるため、人間によるオペレーションコストは低いです。
また、いかなる情報の検閲を排除し、特定メディアによる恣意的な情報操作や制限から解放され、どんな思想・信条であっても差別されることなく誰もが利用できる環境を構築することができます。
具体的なサービス・プロジェクト・組織(DAO)
Web3は2021年から台頭しているというような表現をしてきましたが、実は海外のプロジェクトはWeb3を指向したプロダクトをすでに開発しています。
Coinpostの記事を参考に紹介します。個々のプロジェクトは記事の中で詳細な解説があります。
Web3.0で何が変わる? ブロックチェーン技術が実現させる新しいインターネット
- Web3 FoundationーWeb3.0促進組織
- Polkadot
- イーサリアムーWeb3.0アプリ構築プラットフォーム
- IPFS・FilecoinーWeb3.0ファイルストレージ
- The Graph — Web3.0検索プロトコル
- Brave — Web3.0ブラウザ
- Orchid — Web3.0VPNサービス
画像出典:https://medium.com/@tonyob/the-3-revolutions-of-web-3-7165ed6b3036
Web3・DAOの展望と人類史
世界の歴史は、中央集権(Centralized)と非中央集権(Decentralized)の繰り返しに喩えるができます。
参考:https://medium.com/@tonyob/the-3-revolutions-of-web-3-7165ed6b3036
- 古代:原始人たちはそれぞれが独立した存在(非中央集権)
- 中世:都市国家が登場し君主制による支配(中央集権)
- 革命:君主を打倒し無政府へ(非中央集権)
- 民主:デモクラシー・大統領制(半非中央集権)
同じようにWebも進化してきたということがいえます。
- Web0:大規模機械による処理(中央集権)
- Web1:WWWの登場と分散型システム(非中央集権)
- Web2:GAFAの参入とテクノロジーの発展(中央集権)
- Web3:中央集権化した情報を分散型へ(半非中央集権?)
Googleのスローガンに「Don't be Evil(悪になるな)」というものがありました。これはWeb2を象徴する言葉で、情報を管理する人間が悪に染まらないという約束ごとに依存していたということが言えるでしょう。
一方、Web3では「Can't be Evil(悪になれない)」という言葉で象徴されます。どのような大企業でも個々のユーザーであっても悪になることのできないWebを構築するインフラを目指しているのがWeb3の根底を流れる思想・カルチャーであるといえます。
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