暗号通貨のハードウェアウォレットを試す -Ledger Nano X, SafePal S1-
サマリー
- 暗号資産のハードウェアウォレットの購入を検討している方向けへの情報シェアです。
- Ledger Nano X と SafePal S1 を購入し、使い勝手を検討しました。
- PC では Ledger Nano X を Metamask と連携して使用するのが私のおすすめです。
- スマートフォンでは SafePal S1 がおすすめです。
なぜハードウェアウォレットを使うのか
これまで PC でもスマートフォンでも Metamask を使用していましたが、保有する暗号資産が増えるにつれ、セキュリティが気になるようになりました。というもの、暗号資産は秘密鍵が漏洩すると、だれでも資産を自由に移動することができるからです。Metamask のようなブラウザ拡張機能のウォレットでは、PC(またはスマートフォン)上に秘密鍵を含む情報がストレージ内に保存されており、意図しないウイルス感染などで漏洩する可能性があります。ハードウェアウォレットでは秘密鍵を専用のデバイス上で保管するため、PC やスマートフォンの情報がウイルス感染などで漏洩しても資産は守られます。
参照:Metamask が秘密鍵を保管している場所と復元方法についての ディスカッション
ハードウェアウォレットは個々のニーズで選択する
いくつもあるハードウェアウォレットの中から自分に合ったものを選ぶには、普段からどのような環境・用途で取引をしているかが大事です。私の用途は次の通りです。
- Ethereum のマイニング報酬の受け取り、DEFI
- 通貨、BTC, Ethereum、ERC20 token(ETH, BSC, Polygon)、Symbol
- Windows 10 と iPhone の両方で取引
下表にいくつかのハードウェアウォレットのリンク・価格を記載します。Ledger 社の製品では Nano X を購入しましたが、入門には安い Nano S で十分だと思います。
製品名 | 価格 | PC | スマホ | メモ |
---|---|---|---|---|
Ledger Nano S | ¥8,990 | 〇 | △ | おすすめ |
Ledger Nano X | ¥17,380 | 〇 | △ | |
SafePal S1 | × | 〇 | おすすめ | |
Trezor Model One | 49 EUR | 未評価 | ||
Trezor Model T | 159 EUR | 未評価 | ||
KeepKey | $49.00 | 未評価 |
今回は Ledger Nano X と SafePal S1 を購入しました。Ledger Nano X を購入した理由は見た目がカッコいいから、Bluetooth に対応しているから(注:2021 年 8 月 4 日現在 Bluetooth 経由で使用できるのはスマートフォンのみ)でした。SafePal S1 を購入したのはフォロワーさんが購入していて、試してみようと思ったからです。あえて 2 種類買ったのはハードウェアウォレット自体をバックアップすることが主な理由です(なお、お勧めできませんが、緊急時はハードウェアウォレットのシードフレーズ(二―モック)を Metamask 等のソフトウェアウォレットに入力すれば、取引が可能です)。
上記以外にもbitcoinやethereumのサイトにもハードウェアウォレットが掲載されています。
参考:
Ledger Nano X
Ledgerシリーズはネット上にたくさん情報が転がっていますので、詳しくはそれらを参照してください。ただし、アフィリエイト目的の記事が多いようですので、ここでは私が使ってみた感想を記載します。
Metamask と連携でき、PC での使い勝手は良い
Ledger Nano シリーズには Ledger Live という公式アプリ(PC・スマホ)があり、このアプリ経由で BTC や ETH が扱えますが、私は PC で Ethereum や ERC20 トークンを取引する際は Metamask と Ledger Nano を連携させて使っています。というのも、公式アプリの使い勝手が非常に悪いことに加えて、公式アプリでは Polygon(Matic)でのトークンの扱い方がいまだにわかりません。Metamask と連携させれば、Metamask のソフトウェアウォレットと使い勝手は一緒なので、Metamask を普段使っておられる方はシームレスにハードウェアウォレットに移行できると思います。
参照: メタマスクとの連携方法
https://www.ledger.com/metamask
PC では Bluetooth 接続ができず、USB 接続で使用する
Ledger Nano Xの売りの一つは Bluetooth搭載なのですが、残念ながら PC では Bluetooth 経由で Ledger Nano X を使うことができません(2021年8月10日時点)。したがって USB で接続して使うしかありません。後述するように、私の使い方ではスマホでの Ledger の使い勝手が悪いため Bluetooth 搭載のメリットが全く生かされていません。
スマホでの使い勝手は悪い
さらに非常に残念なことに、私の知る限りスマートフォン(iPhone)では Metamask と Ledger を連携させることができません(2021 年 8 月 4 日現在)。せっかく Ledger Nano X は Bluetooth で iPhone と接続できるのに公式アプリでしか取引ができません。iPhone の公式アプリは使い勝手が悪いため、iPhone ではほぼ Ledger Nano X を使っておらず、もっぱら PC のみでの使用です。この理由から Leger Nano シリーズを購入する場合、Nano X ではなく、半値で購入できる Nano S で十分だと思っています。
対応通貨
次のページに対応コイン一覧が掲載されています。数多くのコインに対応しています。
PC の Symbol wallet は Ledger に対応しておりますので、Symbol もハードウェアウォレットで使っています。
Solanaは少なくともsolletで対応しています。
サポート体制
日本ではハードウェアウォレットジャパン社が Ledger Nano の販売代理店となっており、日本語のマニュアルや日本語でのサポートを提供していますので、導入のハードルは低いでしょう。
SafePal S1
SafePal は 2018 年から活動を開始し、Binance と提携して開発が進んでいます。ハードウェアウォレットであるSafePal S1は2021年に発売されました。ハードウェアウォレットは大事な資産の秘密鍵を保管しますので、どういう会社が作っているのかをチェックしておくのはとても大事だと思っています。
完全オフライン、スマホのみ
SafePal S1 の売りは完全オフラインです。Ledger Nano や他のハードウェアウォレットと異なり、取引の際に PC やスマートフォンと電気的に接続せず、QR コードを使ってデータのやり取りをします。Safe Pal S1 のファームウェアや SafePal のアプリが汚染されない限り外部からの干渉を受けません。
今のところ SafePal S1 はスマートフォンからしか使えません。iPhone の SafePalWallet はよくできていて、私が使っている通貨はスムーズです。最新の firmware で polygon も対応しました(2021 年 7 月)。残念なことに Symbol は対応していません。
ウォレットアプリの使い勝手は良い
SafePal S1はスマホのSafePal Walletアプリ経由で使用します。このアプリは非常によくできており使い勝手が良いです。
SafePal S1で使用するスマートフォンアプリはソフトウェアウォレットとしても使用することができます。SafePal S1を購入しようかどうか迷っている人は、SafePal Walletをダウンロードして使い勝手を試してみるとよいでしょう。QuickSwap、1inchといったメジャーなサイトはもちろんのこと、Binanceもアプリ上で使えるため、非常に使い勝手の良いアプリです。また頻繁にアップデートもされています。スマートフォンアプリのウォレットではMetamaskよりもSafePal Walletの方が気に入っています。
SymbolやSolanaは未対応
残念なのは2021年8月の時点ではSymbolやSolanaに対応していません。Polygonにも7月に対応したばかりなので、今後様々な通貨へ対応していくことを期待しています。
ハードウェアウォレットの注意点
必ずオフィシャルサイトから購入する
ハードウェアウォレットは必ずオフィシャル販売チャネルから購入しましょう。また、購入後は製品が開封されていないかなどチェックしましょう。間違ってもAmazonなどに出品されている公式以外の出品者からは買ってはいけません。細工がされていても見抜けません。
シードフレーズはオフラインで管理する
ハードウェアウォレットの設定時に表示されるシードフレーズ(二―モック)は必ずオフライン管理をしましょう。シードフレーズが漏洩すると、これから秘密鍵を復元できますので、大切な資産を盗まれてしまいます。インターネットに接続されているPCやスマホに保存した場合、せっかくハードウェアウォレットで秘密鍵を分離している意味がなくなります。
故障しても復旧できる
ハードウェアウォレットの故障や紛失の場合でもシードフレーズがあれば復旧することができます。LedgerもSafepalもBIP32で規定された英単語を用いて決定論的に秘密鍵やアドレスを生成しますので(BIP39)、シードフレーズが残っていれば復旧することができます。
また、推奨はされていませんが、緊急事態ではシードフレーズをMetamask等のソフトウェアウォレットに入力することで取引を行うことができます。ただし、あくまで緊急事態でどうしようもなくなった時の対応方法ですので、まったくおすすめはしません。
Ledger NanoとSafePal S1をそれぞれのバックアップとして使う
Ledger NanoもSafePal S1も同一規格に基づいて鍵を生成するため、これらのハードウェアウォレットで同じシードフレーズを使うことで、それぞれのバックアップとして使うことができます。他のハードウェアウォレットでも鍵生成に同じ規格を用いていれば同様のことが可能なはずです(未検証)。
故障時の緊急対応として、ソフトウェアウォレットへのシードフレーズの入力がオフィシャルサイトにも載っていますが、これをするぐらいなら、同じハードウェアウォレットを2本用意するか、2種類のハードウェアウォレットで鍵を共有するなどしてバックアップを用意したようがよいでしょう。
Appendix: シードフレーズの管理
ハードウェアウォレットを買うと、シードフレーズを書き留めるための用紙が付属しており、多くの場合、この用紙に書き留めて保存する方も多いかと思います。せっかくならもっとカッコよく保管したいと思ってしまったあなたにいくつかの製品が販売されています。
大体が金属製の製品で所有欲が満たされます。ネット上のGeekによって、耐衝撃性、耐腐食性、耐火性が厳しく評価されておりますので、最高の堅固性を求めるかたは是非ご参照ください。ツイッターで教えてもらいました↓
私はSafepal S1と一緒に下記の製品を買って使っています。上記のレビューによると、この製品は高温でバラバラになってしまうようなのですが、妥協しました。そのうちバックアップを考えます。
その他
- アップデート、間違いなどがありましたらお知らせいただけますと幸いです。
リンク
- Ledger Nano hardware wallet japan - Ledger Nano 国内代理店-
- SafePal 公式 SafePal.io
- Trezor.公式 Trezor.io