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第三章、高級品の顧客対象になり得る人とは? ~高級品で、これからの生き方を学ぶ~

0-M0T0KI
2 years ago

<お願い> この記事は電子書籍として現在も販売中のものであり、そちらで買われたお客様に申し訳なく思いますので、投げ銭を頂けると非常に嬉しいです(記事を投稿されている方は後日お返し致します)

電子書籍『高級品で、これからの生き方を学ぶ』の「第三章、高級品の顧客対象になり得る人とは?」です。

よろしくお願い致します。

前章では、シャネルのスーツを買う女性の中には「地位財としての理由ではなく、自らの判断でこのスーツにはその価値があると思って買う女性もいる」という話をしました。

ここでは、そのような女性に対して「シャネル(という会社)がどう考えているか?」ということについて、書いておきたいと思います。

くどいようで恐縮ですが、最も重要なところを再度引用します。

~~引用ここから~~

つまり、シャネルのスーツの何がすごいのかと言うと「男性から見た女性の美しさの強要から、女性を解放する」という思想的なものが含まれているところです(単にコルセットをやめただけならポール・ポワレという男性デザイナーの方が先でした)。

創業者であるココ・シャネルの哲学から生まれたそのようなコンセプトが、このシャネルのスーツには含まれているのです。

また、哲学やコンセプトなどの話だけではなく実際に窮屈な服ではないため、このスーツを着て働く女性の生産性もより高くなったことでしょう。

そういう意味でも、ココ・シャネルは人類の歴史に多大なる貢献をしました。

シャネルのスーツの価格の中には生地や糸などの原材料費や製造時の人件費だけではなく、こういった哲学や歴史などの無形の価値が含まれているのです。

~~引用ここまで~~

ココ・シャネルによって生まれたこのスーツは、当初フランスやヨーロッパ各国では酷評されたそうです。

ところが、第二次大戦以降に大きく台頭した国アメリカでは、女性達の圧倒的な支持を得ることに成功しました。

仕事をすることによって、アメリカという国の富を生み出すことにも貢献した女性達は、シャネルの美しく動きやすいスーツを非常に高く評価したのです。

実は、シャネルが本当にターゲットとしているのは、このような概念や思想を理解しそれを高く評価してくれる女性でした。

時代や国が違っていても、そのような女性は一定数必ず存在するはず……それがシャネルの対象とするお客様というわけです。

それがどういう女性なのかをまとめますと、次のようになるかと思います。

●「女性自身が美しく快適だと思う服を着る」自由を「男性から見た女性の美しさの束縛」から「女性を解放する」ことによって、得られるようにしてくれたココ・シャネルを高く評価する女性

それ故に、無理して売ろうとはしないで「価値のわからない人には、買って頂かなくても結構です」という態度を貫いているのです。

そしてこの態度を見て、一部の男性の中には「欧州の奴らはお高くとまって、ぼったくっている」と受け取る人もいるでしょう。

そう言えば、かつて日本を代表する作品にも出演していたとある大女優が、シャネルを出入り禁止になったらしいと噂されたことがありました。

理由は「その女優が借金問題などのトラブルを重ねていたことで、イメージの悪化を恐れた」というものでした。

(当時は、この女優がシャネルの本店で傍若無人な態度をとったからだとも言われていました)

この話は噂レベルであり、これと言った情報ソースは出てきませんでしたが。

ただしシャネルに限らず、高級ブランドの店を出入り禁止になること自体については、珍しい話ではありません。

例えば、かつて家電量販店「城南電機」の名物社長(実際は家電量販店「城南電機」を運営していた信光電機の代表取締役社長)と言われた故・宮路年雄社長がおられます。

宮路社長はとある高級ブランドバッグ店を出入り禁止になっていましたが、その理由は「このブランドで厳禁とされている転売目的の購入をしていたから」でした。

転売目的での購入も、先ほど挙げた「創業者の思想や哲学に共感した」という理由には該当しません(何せ、お金儲けですから)。

しかし、この女優はそういったビジネスをしていたわけではありません。

「借金問題などの度重なるトラブルによるイメージの悪化」というだけで「売らない」ということが、本当にあるのでしょうか?

我々日本人からすると、一つでも多く商品が売れることは喜ばしいことのように思えますね。

ところが、この「イメージ悪化を避けることを優先して売らない」という判断は、高級ブランドでは良くある話なのです。

高級品になればなるほど哲学や思想、世界観などの概念(ブランドコンセプト)を大切にしているからです。

確かにどんなお客さんでも見境なく売れば、一時的な売り上げは上がるでしょう。

しかしそれによってブランドイメージが下がり、本来売りたかったお客さんに失望されて買ってもらえなくなってしまったら、どうでしょうか?

一度失った「本当に対象としているお客さん」の信用を取り戻すのは、非常に難しいことです。

場合によってはその信用を取り戻すことに失敗し、さらに新規のお客さんにも飽きられた結果、経営が著しく悪化し倒産に至る……ということになるかもしれません。

さて、ここで私は「信用」という言葉を遣いました。

この「信用」というものは、今現在では「お金の裏付け」として用いられているものでもあります。

現在、全世界に存在する紙幣はすべて「不換紙幣」であり、もちろん我々日本人お馴染みの「円」も当てはまります。

つまり日本という国の「信用」が「円」という紙幣の裏付けですが、言い換えると「形のある資産の裏付けとなる物は何もない」ということになります。

(かつては「兌換紙幣」と言う、金や銀などの資産となり得る希少価値の高い金属の裏付けを持った紙幣が存在しましたが、今はもう存在しません)

高級ブランドではその会社の歴史や創業者の哲学、あるいは伝統的な製造方法など、形のないものを非常に大切にしています。

少しでも長く会社を存続させ、歴史や哲学、伝統などを守っていくためにどうするか?

そのためには「信用」が大事であり、その「信用」を守るためには本当の価値をわかってくれるかどうかで客を選ぶことも辞さず、それを目先の商売よりも優先する。

これが答えなのではないかと私は考えました。

それともう一つ、高級品の利益率が高いのには大きな理由があります。

今回のコロナ禍でもそうですが、災害や不況のような悪い状況に陥った場合、真っ先に売れなくなるのが高級品です。

非常に高価な上、生活には必要のないものですから、当然ですよね。

つまり高級品は、何らかの問題で売れなくなった時のために、平常時にできるだけ高い利益率で稼いでおく必要があるのです。

これは常に「常に必要があれば買ってくれるお客さんがいる」という日用品とは、決定的に異なるところです。

そしてこのことは、嗜好品を含む高級品や日用品という物だけの話ではなく、職業や人材にも当てはまることなのです。


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2 years ago
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