【初心者向け解説】Web3の誕生と現状の課題

みなさん、こんにちは。たろやんです。
この記事ではスポーツ界におけるWeb3について解説します。 この記事を読むことで、NBAに限らず、あらゆるスポーツやリーグがクリプトを利用してどのような発展を遂げていくのか、またその際の課題について知ることができます。できるだけ背景部分から説明していますので、仮想通貨初心者にも理解しやすい内容となっています。ぜひ最後まで読んでみてください。
概要
- 現在主流となっているWeb2の課題を解決するため、Web3というトレンドが生まれた
- トークン発行を利用したコミュニティ形成によってプロジェクトを運営できるようになった(DAO)
- DAOといっても完全に分散化できているケースは少なく、注意が必要
こんな感じです。以下で詳しく解説していきます。
Web3とは
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Web3を一言で説明すると、「ブロックチェーン技術を用いることで誰でもトークン(仮想通貨)を発行できるようになった現代において、トレンドとなっているインターネットにおける構造改革」と言えるでしょう。これだけだとまだ難しいと思うので、順を追って説明していきます。
Web1→Web2→Web3
“Web3”ということは、Web1およびWeb2から進化してきているということです。まずはWeb1の立ち上がりからどのようにWeb3が誕生したのか見ていきます。
まずはインターネットの初期から考えます。インターネット黎明期ではSNSなどはなく、ホームページを閲覧するだけでしたよね。このように情報が一方通行になっている状態がWeb1と言われています。その後、2010年ごろから台頭してきたSNSの発展によって、誰でもインターネット上にテキストや画像、動画をアップロードできるようになりました。このような双方向的な情報のやり取りができるようになった状態がWeb2と言われています。さらにそこからブロックチェーン技術を利用した仮想通貨が発達したことによってインターネット上で価値(トークン)を”保有”できるようになりました。これがWeb3誕生までの大雑把な流れです。
まとめると、以下のような流れになります。
- Web 1 … Read → インターネット上に掲載されたホームページを読むことしかできない
- Web 2 … Read & Write → インターネットの利用者が誰でも情報を発信できるようになった
- Web 3 … Read & Write & Own → ブロックチェーン技術によって、トークンという価値をインターネット上で所有できるようになった
Web2でもTwitterのアカウントや自分で投稿したYoutube動画、インターネットゲームのアカウント内で所有しているアイテムなど、自分で所有しているように感じることができるでしょう。しかしそれはあくまでプラットフォームから与えられたものにすぎず、規約違反などによりいつ削除されてもおかしくありません。この状態は”所有”ではなく、ただ”借りてる”状態です。このWeb2状態から、真の”所有”が可能になるWeb3ではどんなことが可能になるのでしょうか?詳しく見ていきたいと思います。
ユーザーから搾取するWeb2の構造
今はWeb2時代
現代のインターネットユーザーのほとんどは、Web2の世界しか知らないと思います。それはSNS全盛の現状を踏まえると明らかです。GAFAのような巨大テック企業は、インターネット上でのプラットフォーマーとなることで、インターネットユーザーに対する広告や手数料ビジネスによって巨額の利益を生み出しています。これだけ有名でみんなが利用しているサービスですから、莫大な利益をあげるのは当たり前だと思うかもしれません。
しかしよく考えてみて欲しいのですが、GAFAやTwitter社は魅力的なコンテンツや情報を自社で作っているわけではありません。みんなが「見たい!欲しい!」と思うようなコンテンツや商品を作り出しているのは、他でもないインターネットユーザーです。にもかかわらず、企業に富が集まる構造になっており、ここに構造上の問題があります。
Web2の構造上の問題
有益なコンテンツを作り出しているのはユーザー自身であり、プラットフォーマーをその”場所”を提供しているに過ぎません。にもかかわらず、ユーザーには金銭的な恩恵が還元されません。TwetterやFacebookを見れば明らかなように、ユーザーが価値のある情報を投稿してもお金がもらえることは基本的にありません。
しかし、この現象は当然とも言えます。なぜなら、企業というのは利益を追求する組織だからです。「無理にインセンティブを与えなくても勝手に集まってくるユーザーに利益を還元するくらいなら、株主の利益を最大化しろ」という状況が必然的に発生してしまいます。その結果インターネット上でプラットフォーマーとなった巨大テック企業は、ユーザーに対して金銭的なインセンティブをほとんど与えないばかりか、法外な手数料を取ったり、大量の個人情報の不正利用につながったりと問題が発生しています。
Facebook個人情報不正利用問題、日本法人代表が謝罪「安心安全が最優先」
問題はSNSだけではありません。Amazonに商品を出品した場合、最低でも8%の販売手数料が取られますし、Apple Store上のアプリは売上の30%がAppleにもっていかれる構造となっています。売上の3割が確実に失われる状況でビジネスを行えると思いますか?
まとめるとWeb2というのは、プラットフォーマーに情報と権力が集まるという「中央集権」的な構造となっていることがわかります。プラットフォームが強すぎるが故に、ユーザーや関係者が搾取されてしまうわけです。これがWeb2における構造上の問題と言えるでしょう。
Web3の何がすごいのか
前置きが長くなってしまいましたが、ここでWeb2での問題がWeb3によってどのように解決されるか考えていきましょう。ポイントは「トークンを活用したコミュニティ主導の運営」です。本記事の序盤でも書きましたが、Web3では誰でもトークンを所有できる状況を利用して、プロジェクトに協力してくれる人にトークンというインセンティブを与えることができます。
わかりやすくするために、Web3の世界観で新たなSNSを構築するシミュレーションを考えてみます。
【例】Web3の世界観で新たなSNSを構築する
Web3の世界観でプロジェクトを始めるには、トークンの発行が不可欠です。現代ではイーサリアム上のERC-20規格をはじめとしてトークンを容易に発行できる環境が整っていますので、開発者でなくともトークンを発行することができます。その後は、トークンを保有する人に何かしらのインセンティブを与える設計をします。今回はSNSを作ることが目的なので、「トークン保有者がその保有量に比例して、そのSNSがあげる収益が分配されたり、SNSの運営方針への影響力が増す」というインセンティブを与えることとします。(かなり一般的な設計です)
そのSNSの利用者が増え利益をあげられるようになると、トークンを欲しがる人が現れます。トークンを保有することでそのSNSからの収益の一部がもらえるわけですから自然な流れです。トークンはUniswapなどの仮想通貨取引所でも買えるようにできますが、最も大きなポイントは、「そのSNSの発展に協力した人にトークンを与える」というインセンティブを設けることです。
例えば、SNSが開発されたばかりでまだコンテンツが多くない時期から利用しているユーザーや、新しいユーザーを連れてきた人、またSNSのサイトを構築・運営する人など様々な利害関係者に対してトークンを与えるようにするのです。すると、そのSNSプロジェクトの発展に協力してくれる人が増えますよね。最初はトークンを発行・設計した人による中央集権的な構造でしたが、トークンというインセンティブを設けることによって多くの人々を巻き込みやすくなり、結果的にトークンを保有するコミュニティが主導するプロジェクトへと変化していきます。
プロジェクトへの貢献者が報われやすい世界
このようにWeb3の世界観でプロジェクトを作っていくと、プロジェクトへの貢献度が大きい人が報われやすい状況が生まれます。プロジェクトに貢献することでトークンを貰った人は、そのプロジェクトから得られる報酬や影響力を目的としてトークンを保有し続けてもいいですし、取引所などでトークンを売ることでドルのような法定通貨に変換してもいいわけです。
Web2のSNSではユーザーが頑張って良いコンテンツを投稿しても金銭的なメリットをもらいにくい状況と比較すれば、Web3のSNSに貢献したいとユーザーが感じるのは当然ではないでしょうか。Web2ではプロジェクトへのコミットによって利益を得たいユーザーと、利益を独占したいプラットフォーマーの利益が相反しているのに対し、Web3ではユーザー自身がプラットフォームを管理しているため、すべての関係者がプロジェクトの発展を希望する構造と言えます。
コミュニティ主導で目的の達成を目指す”DAO”
上記ように、トークン保有者によって運営され、プロジェクトの意思決定さえもコミュニティ内の投票で決めてしまう集団のことを「DAO」と呼びます。DAOはDecentralized Autonomous Organization(自律分散型組織)の略であり、株式会社と似ている概念です。以下では、DAOと株式会社を比較することで、DAOの特徴を見ていきます。
株式会社とDAOの共通点
株式会社とDAOでは、集団によってプロジェクトを運営している点が同じです。また株式会社の所有者が株主であるのに対し、DAOの所有者がトークン保有者である点も非常によく似ていると言えるでしょう。上場企業は株式市場で売買できるのに対し、トークンも仮想通貨取引所で売買できますから、その点を見ると株式とトークンは非常に似ている概念です。
それだけでなく、どちらも利益を追求している点も同じです。DAOというのはNPOのような慈善団体ではありません。むしろ参加者はトークンというインセンティブに集まっている状態なので、必然的にプロジェクトに対して継続的に利益をあげることを求めるでしょう。
株式会社とDAOの相違点
大事なのは、株式会社とDAOの違いです。一番大きいのは、株式会社では従業員に法定通貨で報酬を支払っているのに対し、DAOではトークンで支払っている点です。DAOの状況を株式会社に置き換えて考えると、従業員の給料として会社の株式を与えていることになります。もらってすぐに株式を売り払って現金を手にするか、将来の値上がりを期待して保有し続けるのかは従業員次第と言えます。
もう一つの違いは”意思決定”です。株式会社の意思決定は社長や役員が行い、その後で株主総会で承認をもらうという構造です。会社の中心にいる少数の人たちが会社全体の方針を決めており、この構造は中央集権的と言えます。それに対して、DAOではすべての意思決定をコミュニティによる投票で決めます。これは株式会社とは真逆で意思決定が分散化されていると捉えることができます。
さらに言えば、DAOはメンバーに対してメタマスクなどのデジタルウォレットにトークンを送金するという形で報酬を支払うため、メンバーがどのような人物か気にすることがありません。コミュニティに貢献してくれるなら住所や本名、つまり身分証明が必要ないのです。株式会社でしたら、銀行口座に給料を振り込むので必ずリアルとの接点が生じます。しかしDAOは完全にオンラインで完結させることができます。そのため、DAOが作られてから活動が開始するまでが素早く、毎日たくさんの新たなDAOが誕生しています。
株式会社(中央集権)とDAO(分散化)それぞれの得意分野
株式会社とDAOでは意思決定のプロセスが違うため、それぞれの得意分野が異なっています。株式会社では、トップの人間の意見が尊重されるため、良くも悪くも下の人間はそれに振り回されてしまいます。大きな方針転換や抜本的な改革などは株式会社の方がやりやすいのではないでしょうか。しかし、従業員の納得度は置き去りにされてしまい、意思決定に不透明な部分が存在してしまいます。例えば新商品の開発などは中央集権的に行った方が、ヒット商品を生み出しやすい環境にはなるのかなと思います。
それに対して、DAOは投票によって意思決定をするため、新しいアイディアが出にくかったりカリスマによる経営が難しいという特徴が挙げられます。意思決定はそれほど難しくない内容に限りますが、常に透明でありコミュニティが納得した方針で運営を行うことができます。新商品が決まっている状況であれば、価格設定やマーケティングツールなどを決める際にはコミュニティによる投票でも十分に決められます。DAOにおいても、プロジェクトが立ち上がった初期の段階では中央集権的にプロダクトが決められますが、一度プロダクトが決まってしまえばコミュニティの協力を得ながら成長していく過程で、運営が解散して意思決定が分散化していくというプロセスを踏みます。
株式会社とDAOではそれぞれ得意分野が異なるため、どちらが優れているとは言えません。しかし株式会社しかなかった2010年頃と比較して、ブロックチェーン技術を用いて新しいコミュニティ形態が発明されたことは間違いなく革新的だと言えるでしょう。
DAOの例
具体的なイメージをもたせるために、実際に活動しているDAOの例を見てみましょう。
Maker DAO
DAOの例として最も有名なのは「Maker DAO」でしょう。Makerはイーサリアムなどの仮想通貨を担保として”DAI”というドル連動型のステーブルコインを発行するプロジェクトです。DAIの他にもMKRというトークンを発行しており、このトークンの保有量に応じてプロジェクトへの発言権が大きくなります。
DeFiを知らない人には難しいプロジェクトだと思いますが、ここではガバナンストークンと呼ばれるMKRの保有量に応じて運営方針を決めるための投票権が強くなることを理解していただければ十分です。Makerはすでに運営が解散しており、コミュニティ主導の運営を実現しています。
メーカー財団、解散へ──MakerDAOも運営をコミュニティに移行
Constitution DAO
最近大きな注目を浴びたのが、Constitution DAOです。米国憲法の原本は13部現存していますが、その1部がアートディーラーのSotheby’s(サザビーズ)のオークションに出品されました。このアメリカ国憲法の原本を買い取ることを目的として作られたのがConstitution DAOです。このDAOは一週間で54億円もの資金を集めて、非常に注目を集めました。
残念ながらオークションで落札することはできませんでしたが、DAOの可能性の大きさを認識させる出来事となりました。
米国憲法の原本をめぐるConstitutionDAOによる大胆でユニークな暗号資産入札は失敗に
DAOの現状と注意点
Web3やDAOというのは2021年からバズワードとなっていますが、まだまだ黎明期であり落とし穴もあります。そんなマイナスな側面も見てみたいと思います。
実質的な中央集権状態
DAOといっても最初は創業する人もしくは集団が存在しており、プロジェクトが軌道に乗って運営が解散するまでは中央集権的に意思決定がなされます。DAOだと思って投資したり協力していたつもりが、事実上ほとんど株式会社と変わらない中央集権的な組織だったという可能性は十分にあります。また、コミュニティのメンバーが、プロジェクトのためというより創業者に評価されるために活動しているというケースもあります。これではDAOとは言えませんよね。
時間経過とともにDAO化していく可能性はありますが、それまでは株式会社とあまり変わらないでしょう。また、運営が本当に解散するつもりがあるのかも気にしておいたほうがいいポイントです。
トークンの配分における罠
DAOというのは、最終的にコミュニティ主導の運営を行うコミュニティです。そのためにはトークンをうまくコミュニティ参加者に分配していく必要があります。しかしこの時に、創設者や開発者の保有するトークンが多すぎる場合があります。つまり、コミュニティ参加者が報酬としてのトークンをあまり貰えていない状況です。コミュニティの参加者はトークンをもらうために頑張って活動していたが、結果的にほとんど創業者の利益にしかなっていなかったという可能性には気をつけなければいけません。
それを防ぐためには、プロジェクトによるトークンの分配割合を確認しておく必要があります。ホワイトペーパーなどを確認してトークンは最大でいくつまで増える可能性があるのか、誰に対してどの程度割り当てられるのか確認しておくといいでしょう。ただ、創業者やベンチャーキャピタルの保有割合が高いプロジェクトに協力しても搾取されることが多いので、市場原理を考えるとそのようなプロジェクトは人々から受け入れられにくいといった自浄作用が働くので、創業者の自己中心的なふるまいは抑えられやすい構造になっています。
まとめ
今回はブロックチェーン技術によって新たに誕生したWeb3という概念と、それを利用した新しいコミュニティ形態であるDAOについて解説しました。
Web3の思考の中心にあるのは、トークンを保有するコミュニティによってプロジェクトを運営するという”分散化”の概念です。これは、プラットフォーマーが利益を独占しようとするWeb2の”中央集権”的な概念と正反対に位置しており、ユーザーへのインセンティブやコミュニティによる意思決定という点で非常に革新的だと言えます。
僕が参加するKrause House DAOを紹介
補足ですが、僕が参加している「Krause House DAO」というDAOを紹介します。このDAOでは「コミュニティによってNBAチームを所有・運営する」という目的のもと、世界中からメンバーが集まって活動しています。コミュニティ投票によって選手との契約だけでなくGMやコーチの採用を決めたりして、球団の運営を行なっていくという非常に魅力的なDAOです。
なのですが、日本人のまともな参加者が僕しかいません…(泣)。DAOのコンセプト自体は他に類を見ないほど面白いので、興味がある方はぜひ見てみてください。