NFTハラスメント、NFT犯罪を考えてみた
優れた技術が開発されると、必ず悪用しようとする人が出てくるものだ。この記事では今後起こりうるNFT犯罪や悪用の可能性について考えをめぐらしてみた。
NFTを証券的に活用した違法な資金調達
まず、100%出てくるであろうNFT犯罪について解説しよう。トークングラフを活用することで特定のNFT保有者に対して、エアドロップという形で別のNFTを送ることができる。この性質を利用することで、NFTと同じように特定のNFT保有者に対して暗号通貨を送ることもできる。
しかし、将来の配当を約束したNFTを作り、販売することは証券法違反に当たる。
例えば、仮想通貨トレードのインフルエンサーなどが、定期的のその人の稼いだ仮想通貨を配ることを条件に自分のNFTを1個100万円で販売する。
これは違法に当たるのだ。
暗号通貨や現金など、お金として流通しているものを配布する行為は「配当」となってしまい、出資法違反や金融商品取引法違反になってしまう可能性が高い。
金銭やそれに準ずるものによるリターンが保証されたNFTの販売者には気をつけたい。
児童ポルノなどのNFTを一方的に送り付け、他人のトークングラフを汚す
iphoneのAirdrop機能を使い、電車の中などで不適切画像を送りつける「Airdrop痴漢」という言葉が近年話題になったが、同じような事案が今後NFTでも行われるようになるだろう。
現状、NFTを保管するメタマスクなどのウォレットは一方的に送り付けられたNFTや暗号資産を拒否することができない。
これは、自分のウォレットアドレスを知っている人物はどんなデジタルデータでも送りつけることができることを意味する。このように許可なしでアクションができる性質はパーミッションレスと呼ばれ、ブロックチェーンの重要な特性の一つだが、これがハラスメントに悪用されるというわけだ。
有名人が自分のNFTコレクションをネットで公開すると、児童ポルノや猥褻動画のNFTがいつの間にかコレクションに紛れ込んでいる...「有名人の〇〇はこんなハレンチなNFTを所有しておる、けしからん!」
というような印象操作が第三者によって簡単に行われるのだ。このようなNFT技術の特性を悪用し、他人のトークングラフを汚すNFTハラスメントはNFT産業の発展にとって障害になるだろう。
他にも、好きなアイドルなどに自分の裸の写真のNFTを送りつける。価値のないNFTを1000個以上送り付け、NFTコレクターの作品を埋もれさせる、などなど...NFTハラスメントは無限に思いつく。(私だけでしょうか?)
大麻の所有権をNFT化したデータを一方的に送りつける
ここからはちょっと知的なNFTハラスメントの可能性を模索していきたい。
NFTは唯一無二のデジタルデータを所有、占有できる技術だが、例えば明らかに自分のものであると明示されたウォレットで所有が禁止されている何かの所有権をNFT化したデジタルデータを保有する状態は処罰の対象になるのだろうか?
なんのこっちゃ?と思われるかもしれないが、例えばこういうことだ。
NFTにはrNFT(Redeemable NFT)と呼ばれるリアルなものの所有権をブロックチェーンに刻んだNFTが存在する。違法な物の所有権をNFT化したデジタルデータを保有していることイコール違法な物の所有と判断されるとしたらどうなるだろうか?
アメリカのカリフォルニア州では大麻が合法で、サンフランシスコには大麻のグミやチョコレートなど日本で所有していると犯罪になる物が普通に売られている。大麻の所有権をNFT化したデータがアメリカの友人から送られてきた時、それは大麻を所持していることとイコールなのだろうか?
もしもイコールであれば、NFTハラスメントの一環で嫌いな人物に大麻のNFTを送り、大麻所持法違反で逮捕させることができるかもしれない。
とはいえ、大麻NFTによるハラスメントに関しては、まあSFの範疇で書いてみた。大麻のNFTをもらったところで実際の大麻と交換が難しいことからも所有権とは紐づかないだろう。
しかしながら、児童ポルノNFTに関しては、デジタルデータの所有でも罪に問われそうなので、嫌いな人物に児童ポルノNFTを送りつけるNFTハラスメントは実際に起きそうな気がしている...。
NFTハラスメントの解決策
では、今後無限に出てくるであろうNFTハラスメントはどのように解決すればよいだろうか?
①ウォレットが部分的にパーミッションレスでないようにする。
今後アップルやフェイスブックが用意してくれであろうウォレットに、誰かが自分にNFTを送ろうとしている時に拒否できる機能が搭載されれば、この問題はなくなる。ただし、ある意味ブロックチェーンの性質と相反する機能なので、実現には時間がかかりそうな気がする。
②いらないNFTを表示しない機能を作る
これはかなり現実的なプランだ。普段、自分のウォレットが保有しているNFTを見るときはopenseaなどのビュワーで覗くのが一般的だが、スパムのようなNFTはそもそも表示されないようにする。これならNFTハラスメントを行う方も、意欲を失うだろう。
NFTはまだまだ未成熟な市場で抱えている問題も多い。しかし裏を返せば課題はビジネスチャンスでもあるので、起こりうるであろう問題に対して有志が議論しあい、解決策をシェアして発展していけるのがブロックチェーン産業の美徳でもある。
追記:実際にopenseaは認証されていないNFTに関してはデフォルトでHidden(非表示)に分類する機能を2021年の10月に実装した。
補足
ここではあくまでNFTのエアドロップに対して書いたが、暗号通貨のエアドロップがハラスメントになる場合も大いにある。例えば謎の暗号通貨が知らないアドレスから一方的にウォレットに送られてきたとする。しかもcoingeckoを調べるとなんと100万円の価値があることがわかった。一見ラッキーと思うかもしれないが、そのコインの価値はみるみる下がり、気がつくと100分の1になってしまった。
この場合は非常に厄介だ。なぜなら暗号通貨は受け取った時の時価の金額が所得になってしまうので、ざっくり税金が30%だとすると、100万円を受け取った時点で30万円の税金が発生している。しかし、年末にコインが1万円になってしまったので単純に29万円のマイナスになってしまう。
このようなハラスメントが起こりうる可能性をなくすためにも暗号通貨関連の税制は改善されることが望ましい。