HiÐΞClassic

Web3.0とレッシグのコモンズ

柳瀬 将
3 years ago
■導入■第一部 ドットコモンズ・コモンズ・コモンズの例・コモンズの教訓■第二部 ドットコントラスト・現実空間での創造性・インターネットからのイノベーション■第三部 ドット・コントロール・なにが起きているか・代替案としてのコモンズ■現在のブロックチェーンとの関係

こんにちは柳瀬将と申します。

今まではサウナの記事しか書いてこなかったんですけど今日は真面目にやります笑

ブロックチェーンというと、仮想通貨を連想される方が多いと思います。

でも、仮想通貨はブロックチェーンの一部でしかありません。

ここではブロックチェーンの説明は割愛させていただきますが、今のブロックチェーンのを取り巻く環境はweb1.0と呼ばれるインターネット黎明期とどこか似ている気がします。

ローレンス・レッシグはアメリカのサイバー法の権威でインターネットに造詣が深い人物です。

今回はインターネット黎明期の思想を共有し、web3.0がどのような思想の下で提唱されているかを紹介できたらなと思います。

■導入

過去100年間、社会の中のリソースは誰によりコントロールされるべきか議論されてきました。

冷戦です。

社会主義は、リソースの配分と統制にあたり、政府を信用すべきであると主張し、資本主義は、市場を信用すべきと主張しました。

そこでの闘争は市場の物でした。

もっとも、レッシグは、それ以前の問題であるとし、リソースがそもそもコントロールされるべきかそれとも「フリー」であるべきかを議論すべきと提案しています。

以降「フリー」なリソースがイノベーションや創造性に重要であったことを中心に議論が進みます。

この著作では、第一部で、レッシグが「フリー」をどのような意味で使っているかについて説明しています。

そのうえで、「共有地(コモンズ)」はインターネットが生み出したイノベーションにいかに関連しているかを示していきます。

第二部で、「現実空間」すなわちインターネットにだんだん影響されつつも直接的には関係していない空間におけるイノベーションと創造性の環境を検討しています。

また、現実空間の創造性に影響した制約の多くがインターネットのアーキテクチャによって取り除かれた具体例を示していきます。

第三部で、2000年代のインターネットの環境が変わりつつあることを述べ、インターネットが取り除いた障害を再導入する形で変化しているとしています。

■第一部 ドットコモンズ

・コモンズ

まず、レッシグは「フリー」について、リソースへのアクセスがだれかの許可に基づくものでないことと定義しています。

つまり、誰もそのリソースが他人に提供されるかどうかを選ぶ排他的な権利を行使しないということです。

例えば、高速道路は料金を払っているため、無料という意味でのフリーではないものの、だれでもアクセス可能というレッシグの意味では「フリー」にあたります。

「共有地(コモンズ)」というと「共有地の悲劇」を想起する人もいると思いますが、これは非競争的な財は競争が起きないため悲劇は起きません。

また、競合的な財の場合ですら、過剰消費を抑制するための規範により悲劇を回避しえます。

レッシグは、インターネットは規範や技術的アーキテクチャによってイノベーションのコモンズを形成すると指摘しています。

そして、われわれがインターネットがコモンズであることに盲目的であることにより、コモンズを弱めるようなネットの規範やアーキテクチャの改変を無視することにつながっていると述べています。

・コモンズの例

具体例としてレッシグは、電気通信を挙げています。

当初電気通信をAT&Tに独占的に認めていたものの、AT&Tのネットワークは音声通信に最適化していたため、汎用性がありませんでした。

また、AT&Tの許可を得なければ参入できないというネットワークでした。

それに対し、インターネットはend-to-end理論e2e)を採用し、単純な機能だけを実行すべきで複雑な機能は終端のアプリ等で実行させればよいとしました。

このe2e理論のおかげで、誰の許可を得ることもなくアプリ開発を行うことができるようになりました。

前者のネットワークは創造性を中央に「集中」させ、イノベーションのコントロールを維持するために構築され、許可が与えられない限り閉ざされています。

後者のネットワークは創造性を「分散」させ、根本的にコントロールする権利を否定し、コモンズに貢献します。

・コモンズの教訓

フリーなリソースや共有されているリソースの方が私的に所有させるよりも社会にとっての富や機会を作り出すことがあるとレッシグは指摘します。

リソースにはっきりとした用途があるなら、社会的観点からして、リソースが最高最良の使われ方に供されるようにするべきでしょう。

もっとも、リソースの使い方にはっきりとしたオプションがない場合はコモンズに残しておく理由が大きくなります。

また、我々は、投票権や自分の子を売ったりはしません。

これは投票権や自分の子を市場によるコントロールにゆだねていないからであります。

「市場によるコントロールが許されない」ようなものであればコモンズとする必要性が高まるのです。

「万人に提供されるべき基本インフラ」のようなものはコモンズとして残す必要があるのです。

社会はフリーなリソースから利益を得ます。

それと同時に利用が競合的になるリソースは何らかのコントロール方式が導入されないとその利益を得られなくなります。

そこで、それぞれの利益が実現されるようにフリーとコントロールをバランスさせることが重要になるのです。

しかし、昨今のインターネットの変化はコントロールにしか価値がないように進行しているのです。

■第二部 ドットコントラスト

・現実空間での創造性

コントロールは必ずしも悪いものではなく、著作権は創造プロセスと不可分で重要な一部です。

もっとも、単純にコントロールを増やせばいいということではないのです。入力のコストを上げれば、出力のコストも少なくなるのです。

むしろ、連邦最高裁判所は「著作権法は、著作権保持者に対して、その著作権が設定された作品の全ての利用に対してコントロール権を与えるものではない。」と述べています。

これは、著作権者を「財産ルール」ではなく「賠償責任ルール」で保護しようとしているのです。

もっとも、今日では過去のどんな時期よりも、法でコントロールされているコンテンツが多くなってきているとレッシグは指摘しています。

・インターネットからのイノベーション

もとのインターネットのアーキテクチャは、コントロールの機会を最小化して、そのコントロールの環境がイノベーションを促しました。

誕生時には、ネット上の行動を監視したりコントロールしたりするのが難しかったため、インターネットは個人に大きな言論の自由とプライバシーを与えることになったのです。

イノベーションがコントロールの高コストによって保証されたように、自由はコントロールの高コストによってまかなわれました。

■第三部 ドット・コントロール

・なにが起きているか

当初インターネットは、そのアーキテクチャから生じた自由を謳歌していました。

もっとも、アーキテクチャは変化するもので、自由を奪うような形に変えられています。そして、変わるにつれて、自由への脅威と同時に、イノベーションへの脅威が出てきます。

ここでわれわれは「根本的な選択」に直面します。

均一な企業によって、主にマス観衆向けにしぼった創造性のシステムが永遠にコントロールされるアーキテクチャへの回帰を受け入れることもできます。

あるいは、かつてのネットのアーキテクチャを受け入れることもできます。

・代替案としてのコモンズ

筆者はここでイノベーションが花開くようなネットの再構築を主題としています。

特筆すべきはコード層における中立プラットフォームの話です。

プラットフォームに対するコントロールが、新しいイノベーションから自衛するための力に翻訳できるときに危険が存在します。

レッシグは具体例として、政府がマイクロソフトに対して行った主張を上げています。

政府はwindowsプラットフォームを脅かすイノベーションからwindowsを保護しようとしたと主張したのです。

「このような危険を回避するために、政府はまず、オープンコードの開発を奨励すべき」と提言しています。

次に、「政府はインターネットの影響力のあるプレイヤーはだれも、戦略的なふるまいを強化する形でインターネット空間を作り上げないようにすべきである」と提言しています。

これにより、規制は競争圧力が確実に存在するようにして戦略的形でコントロールを行うインセンティブがないようにすることができるとしています。

誤解のないように言うと、レッシグも介入の少ない規制対応を一番としてはいるものの、それは、規制が必要な場合には確実な規制対応が行われることも同時に臨んでいるものです。

コントロールがなされることを前提とする現在のインターネットにおいては不介入を叫ぶことよりも、適切なコントロールを提言していくことが現実的なのです。

また、レッシグは、コンテンツに対するコントロールは完全であってはならないとも主張しています。

アイデアと表現はある程度フリーでなければならないとし、コントロールと自由のバランスの必要性を説明しています。

しかし、いまや法とコードによって完璧なコントロールがなされているのです。

ここで、崩れたバランスを戻すために念頭に置いておく発想が3つあります。

我々の世界は「フリー」なコンテンツの世界であり、その利用に対価を払っていません。

第二に、それと関連して、創造行為が常に別のものを下敷きにしていることも考慮しなければなりません。

最後に、独占は理論では正当化されず、独占保護を拡大する確固たる根拠がなければ保護の拡大は認められないことも念頭に置かなければなりません。

■現在のブロックチェーンとの関係

web3.0は、レッシグの言う、イノベーションの土壌が育っていた初期のインターネットを目指す試みです。

GAFAやその他のプラットフォーマーによりすべての人に自由であったインターネットは法やコードによる規制で、いつしか政府やプラットフォーマーにとって自由な空間になりつつあります。

この状況を打破するかのように現在様々なプロジェクトが出現しています。

イーサリアムはオープンなネットワークで、イーサリアムでは様々なアプリが作られ、レッシグが言ったようにイノベーションが花開いています。

特に、Uniswapはオープンソースであるのにもかかわらず根強い人気があり、クローズドでなければ競合に勝てないという固定観念を打破しています。

DAOは株式会社にとってかわるものであり、従来は株主が経営者を介して会社のコントロールを図っていたところ、トークン保持者が直接DAOの方針を決定することになります。

我々はレッシグのいう「根本的な選択」に直面しているのです。

仮想通貨を単なる投機の対象として認識するだけではもったいないのです。

新しい時代のインフラとしてブロックチェーンは存在するのです

みなさんもレッシグのコモンズを読んでweb3.0の思想の根底にあるものに触れてみてください!


コメント
いいね
投げ銭
最新順
人気順
柳瀬 将
3 years ago
コメント
いいね
投げ銭
最新順
人気順
トピック
アプリ

Astar Network

DFINITY / ICP

NFT

DAO

DeFi

L2

メタバース

BCG

仮想通貨 / クリプト

ブロックチェーン別

プロジェクト

目次
Tweet
ログイン