#01 Much to learn you still have.

大好きなセリフの最初はやっぱりこれに。
Much to learn you still have
STAR WARS: Episode II - Attack of the Clones (2002)
IMDb
好きすぎて、iPad 第七世代を買った時には、この台詞を刻印してもらった。
Prequel Trilogy なら『クローンの攻撃』
STAR WARS 好きですか?
『エピソード2 クローンの攻撃』(2002) は、映画館でのデジタル上映が DLP シネマプロジェクターで始まった頃の作品で、梅田ブルク7 でこれを観たのが私のデジタルシネマ初体験。当時はまだまだアナログ上映がほとんど。この『クローンの攻撃』はいきなり本編から上映だった。トレーラー・予告編はまだまだフィルムばかりだったのでDLP用のものが無かったのだろう。
何かと評判が悪い Prequel Trilogy だが、私はこの『クローンの攻撃』が大好きだ。何十回と円盤を回した。
そう、あのマスター・ヨーダがライトセーバーで戦うシーンを観るために。
動画: "Yoda Against Dooku"
ヨーダ vs. ドゥークー伯爵
『エピソード 5 帝国の逆襲』(1980) で初登場したヨーダは、セサミストリートのマペットのようだった。あのギニョールっぽさ満載のヨーダが、二十年たつとライトセーバーでバトル、しかも、小型牛若丸的に「ここと思えばまたあちら」と跳躍する。
いやあ、CG ってすごい。
ヨーダと対決するドゥークー伯爵を演じるクリストファー・リーは193cm の長身なので、ますますヨーダが小さく見える。かつてはヨーダの弟子であった彼は今は暗黒面に落ち、
I have become more powerful than any Jedi. Even you.
と豪語し、ヨーダに向かってライトニングを放つが、これをあっさり受け止めて払い退け、ヨーダが言い放つセリフが、
Much to learn you still have
このセリフの日本語字幕はなかなか上手い。
"まだまだ修行が足りんな"
二人のかつての師弟関係を踏まえた、いい表現だ。
よわいを重ねると味わい深い
さて、この映画を観て二十年近くが経つ。最初に観た時、この line を字義通りの意味にしかとらえていなかったが、60歳を過ぎてくると、かなり変わってきた。不勉強でいたずらに歳をとってしまった私には いくつになってもまだまだ、学習しなければならないことは山ほどある。 ヨーダにそう言われているような気がする。 若い世代には字義通りのインパクトもあるだろう。
いや、いまや強大な敵となってしまったかつての弟子と対峙したあの場面で、ヨーダ自身も自戒としてつぶやいたのかもしれない。
OSV, CSV なヨーダ
この line の語順についてふれておかなければならない。このセリフは、目的語が先になっている。英語としての正しい語順( S + V + O ) では、
You still have much to learn.
となるだろうが、ヨーダは、
- O + S + V
- C + S + V
な語順で話すことが多い( S + V + 0 している場合もある)。 (ここで S, V, O, C はそれぞれ Subject, Verb, Object, Complement)
IMDb の Quotes からヨーダのセリフをいくつか引用してみる。
Truly wonderful, the mind of a child is.
Pain, suffering, death I feel. Something terrible has happened.
Much harder to answer, that question is.
The dark side clouds everything. Impossible to see the future is.
ヨーダがなぜこういう話し方をするのか、ググってみると面白い説がたくさん飛び交っている。
例 Why does Master Yoda speak in inverted sentences?
上の例の記事中では、
In-universe, it probably reflects Yoda’s native language. Correct word order is one of the hardest things to learn in a second language
という解釈で、これはある意味自然で面白い。が、プロの翻訳家なのに OSV については、
OSV is the most uncommon of word orders in modern languages. (Hebrew is probably the best-known, and it’s not actually the standard word order even in Hebrew.) So out-of-universe, it’s the word order that will give the largest number of people that “alien” impression they’re trying to achieve by simple means.
としているのはちょといただけない。ヘブライ語のほかにも日本語では、O + S + V でもない O + V な語順が常用されてるよ。
- ごはん食べるわ
- お前のこと好きやで
- スマホ忘れてきてしもた
context を共有できている相手と話す時は主語省略は当たり前の便利な日本語使いとしては、ヨーダの語順は最初からとても親しみがもてる。宇宙の田舎もんで言語が下手だ、というよりは自分がいちばん気になっていることばが真っ先に口を突いて出てくる人物なのではないかと思う。
『クローンの攻撃』の2002年は、私がプログラミング言語 Ruby に感染した年でもある。オブジェクト指向プログラミングにおけるオブジェクト名・メソッド名にも、S + V, O + V 的な考察ができなくもないが、この話はまた別の場所で。