日本のブロックチェーン特区構想「DAOヶ島」とは?
前回、ブロックチェーン特区プロジェクト「Satoshi Island」について取り上げたが、今回は、JPYC株式会社の岡部CEOが構想している日本のブロックチェーン特区の構想「DAOヶ島」についてまとめる。
まだ始まったばかりでまとまった情報がないので、下記対談からわかったことをまとめていく。
前回のバヌアツのブロックチェーン特区「Satoshi Island」の記事はこちら
島まるごとブロックチェーン特区!?クリプトの楽園「Satoshi Island」とは
DAOヶ島とは?
もともと、村社会のような小さなコミュニティでは、自給自足で各々の得意分野を活かして協力して成り立っている。これはDAOの仕組みに近い。
ならば地方自治体もDAO化できるのではないか?という構想が「DAOヶ島」。分散型組織に理解がある人間が集まれば、DAOとして運営される分散型社会が実現可能なのではないかと考えられている。
そもそもDAOってなんだお?という人もいるだろうが、解説記事は他所に色々あるのでそっちを見てほしい。超簡単に言うと(厳密には違うが)、代表者不在で、参加者の投票とあらかじめ決めたルールで運営しようとする組織形態のこと。
https://www.fisco.co.jp/media/crypto/dao-about/#index_id0
DAOのメリットは、既存組織形態よりも個人に責任と仕事が集中せず、分散しているために活動がスピーディーに行えることと、利益の分配が公平なことだろうか。国内外に色々なDAOプロジェクトがあるが、SNSを通じて連携しつつ個々が勝手に活動を進めていくので、責任者の意思決定などのプロセスが少なく進捗が早いと言われている。例えば、海外のNFTプロジェクト「Loot」などを見れば、企画が誕生してからとんでもないスピードで展開していることがわかる。
候補地は色々あるが、日本最南端の島「青ヶ島」が有力らしい。wikipediaによると2019年時点で人口170人で、立派な過疎地。必ずしも島ではなくてもいいので、DAO村でもDAO山でもいい。
DAO化するメリットは?
Satoshi Islandの時にも書いたが、ブロックチェーンのような新技術は地方自治体の理解を得ることが難しく、連携が難しい。トヨタ級の大企業は街ごと実証実験の場にすることができるが、スタートアップレベルの企業ではなかなかできない。ブロックチェーン系のベンチャーでも同じような悩みを抱えている所は多いらしい。
DAO理解者によるDAOヶ島が成立すれば、地方でブロックチェーンの実証実験などの企業-自治体で連携した取り組みがしやすくなる。日本の地方自治は裁量が大きいので、正式な手続きを通せば国の承認などなくとも色々できることは増えるらしい。助成金でブロックチェーン企業を誘致したり、ブロチェン関係者が集まるコミュニティとしての役割を持ったりなども考えられる。
これだけ見ると自治体の乗っ取りだが、村おこしの一環としてこういった活動に取り組むことで新規流入者を増やせるというメリットもあるので、過疎地域側にも乗る理由はある。
課題もまだまだありそう
構想レベルなのでまだ粗は多く、課題はいくつも考えられる。
・自治体の理解
地方の過疎化は深刻なので、村おこしなどで人を入れたいと考えている自治体は多い。しかし、DAOというよくわからない仕組みを理解して受け入れられるかと言われたら、難しいと思う。JPYCコミュの言葉で言うならば、こういった新規概念を受け入れない「イ反者」の代表格とも言える地方組織では特に厳しい。
過疎地の人口は少ないので、DAO参加者の人口の方が多ければ強制的に事を進めることはできないことはない。とは言え、そんな怪しい新興宗教団体のようなムーブは避けたいので、メリットを説いて受け入れてもらうしかない。
DAOという組織形態自体も色々議論されているが、積極的に参画する人間が優遇させるという点はいいが、積極的に参画しない人間が取り残されるという懸念もある。
対策としては、候補地に先行して何人か移住してもらい、地元に溶け込んでから人間関係を構築してから本格稼働するのはどうかと議論されている。地方では若者というだけで人手として重宝されるので、現地で色々地元民の手伝いなどをすれば軟化するだろうということだろうか。
新潟県の山古志村では、NFTを使った村おこしを実施しているので、実際の後がない限界集落では可能性はあるのかもしれない。
https://kyodonewsprwire.jp/release/202112144913
・そもそも自治体でできることはあるのか
「Satoshi Island」のバヌアツは国レベルでブロックチェーン振興に取り組もうとしているからできることは多そうだが、日本は基本的に規制を強める方向に進めている(少なくとも現在はそのように見える)。この状態でできることは限られているので、結局日本で特区やるより海外行ったほうがいいよね、という仮想通貨のプロジェクトと同じになる流れもあり得る。
色々課題はあるし、仮想通貨冬の時代が到来すれば人が去っていく展開も考えられる。ただ、Discordを覗いてみると活気はあるし、新しいことに取り組みたい人材も集まりつつある。
DAOヶ島のディスコードリンク https://discord.com/invite/rMPrFBdsv5
見ていて面白いプロジェクトになるかもしれないので、チェックは続けたい。DAOに参加してトークンもらって値上がりしてウハウハだぜ!という展開にはならないと思われるし、トレーダーとしては旨味がなさそうだが、社会実験としては興味深い。
※私の理解の範疇で書いているので、間違いや誤解もあると思います。コメント欄で訂正していただければ、反映します。