【現代文B】CryptoとJPYCで読み解く「2021事務年度金融行政方針」
はじめに
海外ニートのANE(あね) です。
2021年8月31日に、日本の金融庁が「2021事務年度金融行政方針」を公表しました。
COINPOST等の各種報道をみると、仮想通貨交換業に関する2020年度実績と2021年度計画にも言及されているらしく、ANEも興味をもちました。
ところが。
まずはその答えを見つけないと、肝心の内容が頭に入ってこないANEは、アマゾンへ金融庁のHPへと向かった。
金融庁の事務年度
期間
逆に、何月から何月までの計画なんだろう?
さっそく、「金融庁の1年(2019事務年度版)」(最新版)の中に、答えをみつけました。 (出典:「金融庁の1年(2019事務年度版)」(2020年12月24日公表)より)
なんと、金融庁の事務年度の期間は、7-6月 ということが判明しました!
つまり、年度がしまってすぐの7~8月で、昨年度実績の振り返りと、今年度(2021年7月-2022年6月)の計画を練って発表してくれたわけです。
理由
次に、なぜ7月はじまりの事務年度を採用しているのかという疑問がわいてきました。
金融庁の組織概要の一番最初の文章に、平成12年7月に設置されたとあります。 (出典:「金融庁の1年(2019事務年度版)」(2020年12月24日公表)より)
ここは推測ですが、これが年度はじまりが7月の理由なのではないかと思いました。
「金融行政方針」の内容
概要
(出典:金融庁 「2021事務年度金融行政方針」より)
概要を読んでも「暗号資産」の文字はありませんでしたが、本文を読んでいくと、「Ⅱ 活力ある経済社会を実現する金融システムを構築する」の中の、「金融分野におけるデジタル・イノベーション」がブロックチェーンやAI等の革新的技術を指していることがわかりました。
んでもって、金融庁はこれを推進する方針をとるということです!
それでは、本文を詳しくみていきましょう。
本文
A4縦24ページの文章の大意をANEが意訳すると、「複雑でわかりにくい金融商品や悪徳業者から、我々が消費者を守るよ!」という方針でした。
モニタリングに関しては、金融庁が管轄する「証券会社」や「銀行」、「保険会社」などの業態ごとに、ああするこうするといった方針が書かれてありました。
概要で見たとおり、方針の大きな柱は3つありましたが、柱のふたつめ、「Ⅱ 活力ある経済社会を実現する金融システムを構築する」の中で、「暗号資産」が言及されています。
- 金融分野におけるデジタル・イノベーションを一層推進していくことが重要だ
- 2021 年7月に金融庁に設置した「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」において、送金手段や証券商品等のデジタル化への対応のあり方等を検討する
- 特に、環境変化のスピードが速い決済分野については、事業者や業界団体と密に意見交換を行い、事業者のニーズを的確に把握し、API の接続も含めて、当局や業界団体が事業者とともに取り組むべき課題の特定とその解決に努めていく
(出典:金融庁 「2021事務年度金融行政方針」より)
読み進めていくと、ほかの項目にも記載がありました。
「6.様々なリスクへの備え」の中の、「(1)マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の強化」についてです。
- マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の高度化・効率化のため、各金融機関等による共同システムの実用化の検討・実施に取り組む
- FATF 等における国際的な議論について、特に、「暗号資産及び暗号資産交換業者に対するリスクベースアプローチに関するガイダンス」改訂案の最終化など、金融庁が共同議長を務めるコンタクト・グループ関係の作業を中心に、主導的な役割を果たす
(出典:金融庁 「2021事務年度金融行政方針」より)
補足資料
もっと詳しくみていくと、補足資料にも「暗号資産」関連の情報が載っていました。
というより、むしろこっちの「補足資料」の方が、「本文」よりも重要に思えました。
暗号資産交換業
【本事務年度の作業計画】
- 暗号資産の価格が大きく変動するとともに、関連ビジネスは目まぐるしく変化している。暗号資産交換業者におけるビジネスモデルを適切に把握し、利用者保護の観点から、ガバナンス・内部管理態勢等について、機動的かつ深度あるモニタリングを継続的に実施するとともに、検査・監督やサイバー演習等を通じて、継続的にサイバーセキュリティの水準向上を図る。
- 新規の暗号資産交換業の登録申請者に対して、審査プロセスの透明性を維持しつつ、より迅速に登録審査を進める。また、無登録事業者に関する利用者相談が引き続き寄せられていることを踏まえ、無登録事業者に対し厳正に対応する。
- デジタル技術の進展や、暗号資産交換業者における新たなビジネスの展開を踏まえ、あるべきモニタリングの枠組みについて検討を行う。
- 現在、暗号資産交換業者においては、NFT関連事業やIEOなど、従来の暗号資産交換業に含まれないものも含めた新たな業務が開始・検討されているため、イノベーションの促進と利用者保護のバランスに留意しつつ、モニタリングしていくべき範囲や深度、着眼点を検討する。
(出典:金融庁 「2021事務年度金融行政方針」より)
方向性としては、怖くてどことは言えませんが無登録で事業を行っていると注意された海外取引所への規制が強まったり、暗号資産業とは区分されていないNFTやIEO関連までも、監視下に入るかもね、といった脅しに聞こえる人も少なくないのではないでしょうか。
資金移動業・前払式支払手段発行業
【本事務年度の作業計画】
- 通信・IT 事業者の参入やキャッシュレス決済の浸透を受け、一部事業者の決済サービスは、利用者数が数千万人に至るなど、国民生活のインフラへと成長しつつある一方、昨事務年度においては、決済事業者を通じた不正出金や情報管理の不備事案も見受けられた。こうしたことを踏まえ、事業者及び必要に応じてその親会社等と対話を行って全体のビジネスモデルを的確に把握するとともに、ビジネスモデルや国民の期待に応じたリスク管理態勢の整備を求めていく。
- 前払式支払手段発行者については、特に、改正法を踏まえ、発行者が提供する仕組みの中で未使用残高の移転が可能な前払式支払手段を発行する場合には、移転上限額の設定、移転状況の監視体制の整備等の前払式支払手段が不適切に利用されないための必要な措置が取られているか等について、重点的にモニタリングを行う。また、近年、第三者型前払式支払手段発行業の登録を受けている事業者が資金移動業の登録も受け、一体的なサービスを提供し、利用者の拡大を図っている。こうした事業者については、一般消費者による利用が多く、キャッシュレス社会の進展に向けた各般の取組みが進められている中、事業規模も大きくなりつつあることから、社会的・経済的な影響の大きさも踏まえ、それぞれの事業のリスクにくわえて、利用者の資金移動業と前払式支払手段発行業の誤認のリスクなど、一体的なサービス特有のリスクにも応じたモニタリングを行う。
- 事業者からの新規参入希望の増加が予想されることや、新しい種別の資金移動業が創設された状況を踏まえ、登録審査については、適切な審査体制を構築し、手続きの迅速化に取り組む。
- 2022 年度を目途に、全銀システムの参加資格が資金移動業者にも拡大されることから、一般社団法人全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)及び日本銀行と連携の上、資金移動業者に対するモニタリング上の対応を検討するとともに、その結果を踏まえ、事務ガイドラインを改正する。
(出典:金融庁 「2021事務年度金融行政方針」より)
字多くてつらい・・・
本当はこのほかに「コラム」が付いているのですが、「暗号資産」のキーワードは出てこなかったので、ここまで読んでおけば、今年度の金融行政方針についてはばっちりだと思います。
おわりに
法整備が追いついていない仮想通貨界隈では、まだまだセキュリティ対策や犯罪防止に課題が残っている現状ですが、国も利用者の被害を少なくしようとがんばってくれています。
利用者の利益と、利用者保護とが、良いポイントで解け合って、未来志向のおはなしができたらいいですよね。
どちらも目指している方向は同じはずなのでね!