【オピニオン】NBAが持つWeb3イノベーションのジレンマ

みなさん、こんにちは。たろやんです。この記事では、CoinDeskというクリプトメディアがNBA×Web3について考察していたので、紹介したいと思います。
参照記事
The NBA’s Web 3 Innovation Dilemma
↓以下翻訳です。
そのプロバスケットボールリーグはNBA Top Shotを率いてきた。しかし、ファンの関与やオーナーシップといったWeb3のより大きな可能性に準備はできているのか?
コミッショナーであるアダム・シルバーのリーダーシップのもと、NBAはアメリカにおいて最も先進的なメジャースポーツリーグであり続けている。結果として、最もクリプトに先進的であり、特にNBA Top Shotを生み出したDapper Labsとパートナーシップを結んで生きたことに驚きはない。その最初の週では、NBA Top Shotはこれまでのプロダクトとは一線を画す方法で主流の消費者を席巻し、非代替トークン(NFT)の流行を開始した。
NBA×Dapperパートナーシップが、デジタルコレクティブルやファンのエンゲージメントに関する可能性の表面を削ったにすぎず、NBAは今クリプトやWeb3との関係を先に進めるように取り組まなければならない。NBAは、(NFTコレクティブルのような)利益を最大化させてくれる技術だけでなく、分散化されたオーナーシップ、ガバナンス、財政的なWeb3の精神を迎え入れることができるのか。もしそうなら、その精神は30チームのオーナーの利益と矛盾するように思える。
よりWeb3ネイティブになることは、現在まで維持するビジネスモデルについての長期的な信仰を刷新する必要があり、簡単ではないだろう。一方で、Web3(チーム自体のオーナーシップをファンに任せること)に沿って発展しないことは、直ちに結果をもたらすものではない。しかし、リーグの長期的な文化・消費アピールを脅かすだろう。
NBA vs. Web3マインドセット
30チームが存在しているNBAはビジネスとして、自分達のコントロール量を最小限に抑えながら、今日における収益と未来(ファンのエンゲージメントの獲得)を最大化する方法を模索している。NBA Top Shotは完璧にその戦略に当てはまった:魅力的な新しい財源となり、ファンのエンゲージメントにもつながったため、リーグの犠牲が不要なwin-winとなった。
しかしながら、その最大化によってWeb3について言えばイノベーションの天井ができてしまった:NBAによるブランドやプロダクト、ビジネスモデルの厳しいコントロールは、ファンや選手にコントロールを委ねるというWeb3のマインドセットに真っ向から対立している。
ConstitutionDAOはアメリカ憲法のオリジナルコピーを手に入れられなかったが、非常に高価で誇り高いものが購入可能というような、その可能性を広げるのに成功した。スポーツチームをDAOが所有するというアイディアはすぐにやってくる。ファンはスポーツチームのファンによるオーナーシップに飢えている。しかしNBAは準備ができているか?
ここ数年、NBAはチームの一部の所有権に投資する資金調達を認めなかった。その後2021年初頭にNBAはその考えを変え、ファンドがNBAフランチャイズやチームの最大20%まで所有でき、機関投資家がオーナーシップの最大30%まで受け入れることを認めるというプライベートエクイティ所有の枠組みを策定した。これらのガードレールがあることでリーグは、フランチャイズの評価額がこれまで上がり続けている今において、マイノリティオーナーのための大きな流動性といった恩恵と引き換えに新しいオーナーシップ構造を開くことができる。
今日では、DAOから投資を受けたチームを受け入れる考えが、NBA生活者にとって今なお馬鹿げていると思われているようだが、機関資本にもオープンな優先権とそれほど異なるものである必要はない。このリーグはDAOのような新しいオーナーシップを通じたファンとの関係性の許容範囲内に収まるようにパラメータをデザインできるし、すべきである。
ファンは何を求めているか
NBAの未来の成功は、ファンが時間とお金を使い続けてくれるかにかかっており、目玉と財布なしにはこのリーグは存在し得ないのだ。だからこそ、長期的な成長を目指すあらゆる戦略はこの質問から始まらなければならない:「ファンは何を求めているのか?Web3の叫びは分散化オーナーシップであるが、それは本当にファンが気にしていることなのか?」
人はオーナーシップそれ自体を望んでいるわけではなく、オーナーシップによってもたらされるものや感情を望んでいるのだ。スポーツチームを含むあらゆるアセットのオーナーシップはおよそ4つの基本的な恩恵やモチベーションをもたらしてくれる。
- 愛/誇り:特有の満足感(このチームを愛していて、一部を所有したい)
- ステータス:外部信号(チームのオーナーになりたい)
- コントロール:ガバナンスと意思決定(チームの方針に口出ししたい)
- 欲望:金銭的なリターン(チームの価格評価から利益を得たい)
異なるファンが異なるモチベーションを持っているが、真のファンエンゲージメントを生み出すには、少なくともこれらのうち2つは満たされる必要がある。Sociosのようなファントークンは、チームのオーナーシップとファンがチームの意思決定への影響を与えることを約束し、そのような欲求に応えるために登場した。ファンからの評価は今ひとつであり、これには正当な理由がある。ファントークンは、発行者の高尚な約束を満たすことができない段階的なイノベーションを代表している。
Just DAO It
理論的には、Sociosのような会社は、チームのトークン販売による追加の収入を生み出したり、ファンにチームの意思決定権の一部をファンに与えるような影のオーナーシップとしてファントークンを用いたwin-winの状況を提供する。
実際には、すべてではないにしても今日におけるほとんどのファントークンプログラムには、ファンに意味のある意思決定を生じさせるのを怖がっており、失望されている。”誰が月間最優秀選手?”といったトピックの無意味な投票も、Instagramの投票で同じように実現できるだろう。
結果として、ファントークンはオーナーシップについての4つ全てのモチベーションを届けるのに失敗している。
- 愛/誇り:感情面での恩恵は、ファントークンが提供することができなかった現実の繋がりを必要としている。これまで、ファントークンは独占的なお金だったが、遊ぶためのボードや一緒に遊ぶ友達がいません。
- ステータス:開かれたマーケットに簡単にアクセスできるため(そして各チームが自由にトークンを発行できるようになったことで)、ファントークンはもはやフレックスを許さない。誰でもアマゾン株を所有できるので、”私はアマゾンの株を持っている”とは誰も言わない。ファントークンもそれと同じだ。
- コントロール:あるチームがファン投票による意思決定に消極的であることを考えると、ファントークンはファンが球団の意思決定に発言するという主要な約束に失敗する。
- 欲望:ファントークンの価値はフランチャイズの価値とは完全に乖離し、クリプトセンチメントや短期的な需要によって変動が激しいアセットであり、長期間の価値を評価するホルダーよりも投機家に沿ったものだった。
要するに(現在発行されている)ファントークンは、ファンとチーム/リーグ間の関係性を実際に変えるというよりも、Web3イノベーションの幻想というただの解決策にすぎない。
少数のオーナーシップDAOは、ファントークンがファンに約束していることをより良く実現し、またリーグの長期的な目標にもより良く貢献することができる。なぜならさきほどの4つのオーナーシップモチベーションを提供することができるからだ。DAOはファントークンよりも優れているプロダクトをファンに提供し、コートサイドの席が2つあるくらいで、個人による少数株主とほとんど変わらない。
実際にはリーグはDAOをインセンティブで連携するスーパーファンのグループとして扱うことで、DAOと(チームの意思決定には全く影響を与えない)個人の少数株主に対して追加のガバナンス情報を与えることを選択することができる。
人はガバナンスのためのガバナンスはどうでもいい。ガバナンスの権利はただ私たちが本当に気にしているメカニズムを提供するだけ。DAOが他の少数株主よりも劣らない統治権を持ち、かつリーグがDAOの意見を真摯に望んでいるという期待が前もって一致している場合に限り、全ての関係者は現状維持やファントークンよりも良い状態になるだろう。
DAOに少数のオーナーシップを持たせ、リーグとのコラボを許可することは、さらに将来的にコミュニティによるより実質的な支配権の所有と、それを成功させるために必要な条件を検討するための比較的低い利害関係の学習機会を両者にとって作り出す。
他には?
NBAは今日、最もクリプトに精通しているため注目されているが、現状のステークホルダーという既得権益が足枷となっている。リソースやブランドパワーはあるが、影響なく実験したりすばやく動く能力を失っている。そのため、新参者がファンの心や財布を掴む隙間ができてしまう。Fan Controlled Footballのような新興リーグには既得権益がない。彼らはインセンティブのコントロールやキャッシュフローを一からデザインできる。MLSのような赤字のリーグや、小さいが深いファン基盤をもつWNBAもまた、Web3ビジネスモデルに適している。失うものがないというのは非対称的に上昇していく可能性を意味する。
企業と同じように、リソースはないが軽快な新参者は、下からディスラプトしイノベーションを起こす機会を持っている。もし、というかいつか、もしあるリーグがファンをインセンティブと紐づけたシェアホルダーに変えるWeb3ネイティブなプロダクトを提供するコードを解読すれば、変革が進まない他の全てのリーグへのアピールというかなりの反響を呼ぶだろう。新時代のファンはテクノロジーネイティブで従来のアプローチでは満足できないほど要求が高い。
アダム・シルバーへ
NBAはアメリカの他のメジャースポーツよりも若いファンを持ち、国際的に展開している一流プロジェクトである。今すぐにイノベーションを起こす必要はないが、アダム・シルバーのもと大胆に主導権を握り新しいテクノロジーを恐れないNBAは、MLBやNHLのようなリーグと比較して羨ましいポジションについている。Web3は黎明期であり全て実験と実践による学びを呼びかけている。NBAも同じだ。
このアプローチはまずファンから始める必要がある。統計(年齢や消費意欲)からタイプ(チームファースト対プレーヤーファースト)や強度(カジュアルからスーパーファンまで)といったセグメントに渡って現在のNBAとWNBAのファンを理解し、彼らの深い関与とニーズと欲求を把握し、彼らに役立つ実験とソリューションを構築するのだ。
何年もの間、WNBAは妹分として扱われているが、より軽快で素早くテクノロジーを理解して実現するエネルギッシュな兄妹として輝く時が来た。WNBAがNBAにとっての赤字部門であることは周知の事実である。NBAの事実上のWeb3イノベーションラボとして、それをチャンスに変えない手はないだろう。
NBA事務局は2019年に初めて球団オーナーに少数機関投資について話を持ちかけ、実施したのは2年後だった。NBAのような貴重なブランドの変化には時間がかる。だからこそ今すぐファンのオーナーシップについて考え始めることが重要である。
イノベーターのジレンマは恐ろしい。なぜなら、未来の生き残りや成長の引き換えに現在を犠牲にしてする必要があるからだ。しかし対局的に見れば、ファンによる少数所有を認めることは全く大きな犠牲ではない。それはファンとリーグの関係を再定義し評価することができる。もしアメリカのメジャースポーツのどれかができるとすれば、それはNBAだ。
