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監視男第四話

立花紫朗
2 years ago

 

 一郎は少し離れて、零子の路上ライブを聴いていた。以前と比べて、聴衆が増えている。大勢が立ち止まって聴いていた。彼女の毎日の努力が、実を結んでいる。歌も上手くなっていた。そして、その日は特にノリに乗っていた。 
 実は、零子は一ヶ月前にプチ整形している。声もだ。貯蓄を崩した。現在はガールズバーで働き、再び金を貯めている。『ブス』だと、ネットで中傷されていたのが原因だった。

  一郎は感動していた。気付くとパワハラを忘れている。温かいオーラに吸い込まれていた。ふと、親が「見られていることで、女性は美しくなる」と昔語っていたことを、思い出している。自宅でも、その歌声を聴きたくなった。頭の中で貯蓄残高を計算する。まだ、大丈夫だ。そして、部屋を片付けようと考えた。間取りを考えて音響効果を最大にしたい。 その後にLPを再び買い、演奏が終わった。気付くと、一郎のお腹が空いている。とぼとぼと、商店街へ向かった。

 ファーストフードの全国チェーン店で、一郎はハンバーガーを四個も注文した。セットメニューをつけて。そのまま、一階の窓側で下品に食べた。口から赤いものがはみ出している。全て食べ終わると、窓越しに同僚たちを発見した。酔っぱらい、楽しそうに歩いている。
 その後、ポテトと一緒にコーラを飲んだ。もう一杯欲しくなり、レジに向かった。そこには零子がいる。一郎には、気付いていない。会計を済ますと、今度は二階に向かった。そこには喫煙ルームがある。二階のトイレに行くついでに、透明な壁に仕切られた喫煙室を観察した。やっぱり、零子がタバコを吸っている。一郎にはショックだった。 

 一郎は、煙草を吸う人間を大変馬鹿にしている。 一郎は常日頃から、こう考えていた。
”役所の喫煙室にいる奴等は所得が低い。職員にもいるが、性格が悪いか、育ちが悪そうな奴ばかりだ。そして、彼らの会話は下品だ。そこでは、ギャンブルの話題が多い。奴等は大人になってからも、反抗期なのだ”
 奥の方で女子高校生が騒いでいる。ただ、気にならなかった。一郎は零子へアドバイスをしたかった。
「タバコは止めようよ。貧乏になるから」と。


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2 years ago
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